相続コラム

2023/08/10 相続コラム

寄与分について

寄与分とは

 相続人の中に、亡くなった被相続人の財産の維持や増加に対して特別の貢献をした人がいる場合、この貢献を遺産分割の中で考慮することで、遺産分割を公平に行うことになります。この特別の貢献のことを「寄与分」といいます。

 寄与分があると、遺産から寄与分の額を差し引いた額を元に、各相続人が受け取るべき額(具体的相続分)を算定し、特別な貢献(寄与)をした者については、寄与分を加算した額を受け取るべき額(具体的相続分)として計算します(民法904条の2)。

 なぜこのような処理を行うかというと、被相続人の財産の維持・管理に特別な貢献をした者(寄与者)は、遺産の中に、本来であれば寄与者に帰属すべき利益があるといえるので、これを寄与者に帰属させることで公平を図ることができるためと考えられます。

計算方法

 例えば、被相続人である父(夫)が亡くなり、相続人が妻と長男、長女である場合で、残された遺産の額が5000万円であるとき、通常であれば、妻が2分の12500万円、長男と長女はそれぞれ1250万円が相続分ということになります。

 このとき、長男が被相続人の財産の維持・増加に特別な貢献をしていて、寄与分の額が1000万円と認められる場合に、寄与分による調整が行われます。。

 この場合、まず5000万円から1000万円を差し引いた4000万円を元に各相続人が受け取る額を計算します。この例では、妻が2分の12000万円、長男と長女は1000万円ずつになりますが、長男には寄与分の1000万円が加算されますので、最終的に2000万円となります。

 このように、寄与分があった場合となかった場合とでは、受け取れる額が変わってきます。

 ただし、以下に述べるように、寄与分は必ずしも認められるとは限らず、その金額も、単純に計算できるものではありません。

寄与分が認められるケース

 相続人が被相続人の財産の維持・増加に何らかの貢献をしていれば、全て寄与分として考慮されるわけではありません。現実的に、そういったものを全て挙げていくと収拾がつかなくなるでしょう。

 遺産分割の際に考慮される寄与分とは、「特別な」貢献である必要があり、家族として通常期待される程度の貢献は、ここでいう寄与分には当たらないということになります。

 また、あくまでも、財産の維持・増加に関する貢献が必要となりますので、少なくとも、その貢献によって何らかの支出を免れた(財産の減少を防いだ)といえるような事情がなければなりません。

態様による分類

 寄与分の前提となる「特別の貢献」は、その態様によって以下のように分類されます。

1 事業従事型

 民法では、「被相続人の事業に関する労務の提供」(民法904条の21項)とされています。

 亡くなった被相続人が個人事業主であった場合や、被相続人が代表者を務める会社があった場合に、無報酬又はそれと同視できるような状況で労務の提供を行っていた場合を指します。

2 出資型

 民法では、「被相続人の事業に関する財産上の給付」(民法904条の21項)とされています。

 被相続人の事業や会社に金銭や不動産などを提供したような場合を指します。

3 療養看護型

 被相続人に看護や介護が必要になった場合に、対価を得ることなく看護や介護を行ったような場合に寄与分として認められるものです。

 現実的にこのようなケースは多いと思いますが、扶養義務の範囲を超えるようなものでなければならないため、特別の貢献といえるものは必ずしも多くありません。

4 扶養型

 被相続人を自宅に引き取って面倒をみたり、生活費の援助をしたような場合です。

 これも、扶養義務の範囲を超えるといえるものでなければなりません。

5 財産管理型

 不動産等の財産を管理することによって、これを維持したり、賃料収入を確保していたような場合です。

 いずれの場合も、「特別の貢献」といえるものであれば、寄与分として考慮することが可能になります。

具体的な寄与分の額

 「特別の貢献」といえることが認められ、寄与分として考慮することになったとして、その額をどう評価するかが問題となります。

 事業従事型・療養看護型・扶養型・財産管理型については、そもそも基準となる金額をどう設定するのかが問題となり、出資型でも、出資した額そのものではなく、調整が行われた額が寄与分の額となります。

 したがって、実際に寄与分を考慮して遺産分割を行う場合には、実際の実務ではどのように金額が認定される傾向にあるのかを掴んでおく必要があります。

 

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