2024/04/04 相続コラム
遺産相続をめぐる兄弟姉妹間のトラブルの解決
トラブルの相手
遺産相続でトラブルとなる場合、トラブルの相手として多いのは誰でしょうか?
遺産相続が発生する場合、相続人は、配偶者と子のほか、両親や兄弟姉妹であったり、他の第三者も当事者となることがあり得ます。
そのため、あらゆる人がトラブルの相手となり得ます。
しかし、実際に遺産相続をめぐって全くの第三者とトラブルになることは多くなく、親子で争いになることもそれほど多くはないでしょう。
現実的に多いのは、親が亡くなった場合の、子供同士(兄弟姉妹)の争いだと思います。
そこで、ここでは遺産相続をめぐる子供同士(兄弟姉妹)でのトラブルについて、なぜトラブルになりやすいのか、法的にはどう考えられるのかについて概要を説明します。
子の相続分
遺産相続では、法律によってどうやって遺産を分配するのかの目安となる割合が定められていて、これを相続分といいます。
親が亡くなった場合の相続分は、その配偶者がいる場合は2分の1、子は残った2分の1を子の数に応じて平等に分けられることになります。
親が亡くなった時点で配偶者が死亡していたり、離婚していないような場合には、子だけで遺産を平等に分けることになります。
問題となるケースの類型
上記の割合で残った遺産を分けるだけであれば、そこまで問題になることはないでしょう。
しかし、実際には以下のような問題が生じて争いになることが少なくありません。
財産を明かさない
問題となるケースの1つ目は、兄弟姉妹の1人が親の財産を管理していて、いくらの遺産があるのかを把握しているにもかかわらず、遺産分割協議を進めていくにあたって必要となる遺産の情報を開示しようとしないというパターンです。
ご相談の中でも比較的多く見られる類型ですが、このように遺産の開示を拒む相続人は、全ての財産が知られていないことを利用して、自分の取り分を多くしようとしている可能性があります。
例えば、個々の遺産の内訳を明らかにせずに、「預貯金の全て」とか「不動産の全て」といった形で財産を取得することを遺産分割協議書に盛り込もうとしている場合は要注意です。
また、次に述べる相続財産の使い込みを隠す意図があることもあり得ます。
このように遺産の開示を拒まれる場合、預貯金の口座の調査や、不動産の名寄帳の取得などが必要になってきます。
相続財産の使い込みがある
子供の1人が亡くなった親の口座をその生前に管理していたような場合、預貯金を自由に引き出すことができる立場を利用して、自身の生活費などに充てることが珍しくありません。
親の生前は、他の兄弟姉妹がこのことに気付かないことが多いですが、親の死後、預貯金の残高を確認したら、あるはずの財産がほとんどなかったというような事態が発生し、預貯金の使い込みが発覚します。
親に無断で親の預貯金を使っていたような場合、親に対する横領のような形になりますので、使ったお金を返還してもらう必要がありますし、仮に親の承諾を得た贈与であったとしても、その点は遺産の分配をする際に考慮する必要があります。
いずれにせよ、親の預貯金を取得していた相続人は、これらの清算を拒むことが多いと思われますので、話し合いが難航することが多いです。
まずは、預貯金口座の取引履歴を全て取り寄せ、不審なお金の動きがないか確認します。
大きなお金の動きがあれば、預貯金を管理していた者が事情を知らないということは通常であればないはずですので、この点について事情を聴き、合理的な説明ができないようであれば、遺産の分配にあたって考慮されるべき事情となります。
話し合いが難しければ地方裁判所に民事訴訟を提起することもあります。
生前に多額の援助を受けていた
子供の1人が生前に親から多額の援助を受けていたような場合、兄弟間で不公平が生じてしまいます。
内容によっては、「特別受益」といって遺産の前渡しと評価され、遺産分割の際に考慮されることになります。
ところが、この援助にあたって書面の取り交わしなどの証拠を残すことは少ないため、援助を受けた者が援助の事実を隠していたり、遺産分割時に考慮することを拒んだりすることが少なくありません。
その結果、生前の援助も考慮した上で公平な分配を望む他の兄弟との間で争いになります。
援助があれば必ず「特別受益」となるわけではありませんので、まずは法的にみて「特別受益」と評価すべきかを確認します。
話し合いで折り合いがつかなければ、家庭裁判所に調停を申し立てることになります。
亡くなった親の介護などをしていた者がいる
上記の援助とも関わりますが、亡くなった親が介護が必要な状態となった場合に、子供の1人が介護をしていたようなケースでは、この介護をしていたという事実を遺産分割時に考慮することはできないかが問題となります。
法律的には、「寄与分」という形で考慮されることがありますが、この「寄与分」として認められるには、当然行うべき扶養義務の範囲を超えたものでなくてはならず、介護をしていたといっても、これには満たない場合が多いです。
このときに、介護をしていた兄弟姉妹から、「介護をしていたのだから多く財産を受け取りたい」という主張があったり、「介護の謝礼としてお金を受け取っていた」といった事情があったりすると、話し合いが上手く進まないことがあります。
まずは、法律的に「寄与分」といえるだけの貢献があったのかを、実務の運用に照らして検討します。
「寄与分」と評価できるほどの貢献があったのであれば、それを踏まえて遺産の分割をすべきです。
「寄与分」とは評価できなくても、話し合いによって、これに報いるような形で遺産を分けるということもあるでしょう。
話し合いで解決しなければ、家庭裁判所に調停を申し立てることになります。
相続する財産の中に不動産が含まれる
上記のような形で相続する割合を修正する必要がなくても、不動産を相続人の1人が受け継ぐことになる場合、その不動産をいくらで評価するのかで争いになることがあります。
不動産の評価は、固定資産税評価額や路線価を元に計算したり、不動産業者に査定を依頼する方法などがありますが、いずれも、必ずしも実勢価格を正しく表しているとは限りません。
したがって、不動産の評価額に争いが生じると、折り合いをつけるのが難しくなります。
話し合いで解決できなければ、家庭裁判所に調停を申し立て、鑑定の手続をとることなどが考えられます。