2024/12/09 解決事例
遺産分割調停で他の相続人の特別受益が認められた事例
事案の概要
本件は、相続人の1人が、生前に亡くなった被相続人から多額の援助を受けていたため、これが不公平であるとして、遺産分割協議(調停)の中でこのことを考慮してもらいたいという依頼でした。
特別受益
相続人の一部が被相続人から多額の贈与を受けていたり、一部の財産を特定の相続人の相続させる内容の遺言書が残されていたような場合、最終的に残された遺産を分配するときに、そのまま法定相続分で分配すると不公平が生じてしまいます。
そこで、「特別受益」といって、贈与などの金額を遺産に加算して分配する金額の総額として、それに法定相続分をかけることによって各人が取得すべき財産(生前贈与などを受けている人は、その分追加取得分は減ります)を決定し、公平性が確保されるようにする制度があります。
この事案も、特別受益がどこまで認められるかが争点となりました。
問題点
特別受益を主張する場合、生前贈与等があったことを、事実上、主張する側が証明しなければなりません(裁判所が調べてくれるわけではありません)。
したがって、特別受益があったことを示すような証拠がどれだけ残されているかが最も重要なポイントとなります。
家族間のやり取りで逐一契約書のようなものを作成するということは多くないと思われますので、この証明が特別受益を主張する際のハードルとなります。
また、特別受益に該当するような生前贈与の時期は、遺産分割協議の時点から数年から場合によっては数十年前であったりするため、証明が困難であることが少なくありません。
本件について
本件では、生前贈与が他の相続人の口座へ振込みで行われている部分が多く、そのときの振込みの明細書も幸いなことに保管されていましたので、これを使って証明することができました。
それでも、それは借り入れに過ぎず返済済みである、自身のために使ったものではないといった反論はありましたが、最終的に1400万円の特別受益が認められ、これを考慮して遺産分割を行うことができました。